※R15 会社シリーズの百鬼丸過去  どんどん下へスクロール

「いいきみだ。」という誰かの言葉が聞こえて、何がだと思った。
きっと“ダイゴ”が関わるのだろうと思いながら、胃の内容物をぶちまけた。



物心付いた頃、私には母と父がいた。
二人ともいつも笑顔だった。絵に描いたような家族だったと思う。
小学校に上がる直前、黒いスーツの男達が家に来た。
硬そうな銀色のケースカバンを持っていた。
両親はそのカバンを貰うと、今まで見たことがないほど喜び叫んでいた。
何があったのだろう、よほど良いことに違いない、
両親の元へ駆けた私はその勢いのまま突き飛ばされた。
わけもわからず母と父を見ると、そこには冷たい目があった。
母は大事そうにケースを抱えていた。今まで私がいたはずの母の腕。
父は使わなくなったものをみる眼つきで私を見下ろしていた。
黒いスーツの男達が私の手を掴んだ時、母が言った。
『やっと長い演技が終わったわ。』
男達に抱えられ連れて行かれる中、両親の名を叫ぶ私の目には、
カバンから札束を舞い散らせ、踊り狂っている両親が映っていた。



新しい家ですと言われたそこは、招かれているとは思えない環境であった。
父母同い年の子供。そこには家族があった。
私を除いて。

新しい同居人を息子が気に入るわけもなかった。
息子が私を「イヤ」と言えば「そうね」と父母が言った。
息子が私を「見たくない」と言えば「部屋に行きなさい」と父母が言った。
息子が私を叩けば蹴れば殴れば、父母は拍手をした。
「強いわ、  くん。さすがは私の子供」母は満面の笑みを浮かべていた。
その笑みを作り出しているのは、私だ。
今この馬鹿息子に殴られ骨を折った私がいるからこそ、母は笑顔なのだ。そう考えることにした。
小学校を卒業する頃、あるいは大小なりとも骨折を10数回経験した頃、黒いスーツの男達が再びドアを叩いた。



中学校は名門校であった。
しかし風格漂う校舎からは想像できないほど、内部は腐っていた。
中学生特有の陰湿な精神性や暴力的な自由思想、芽生えたての性欲が蔓延っていた。
「あれがあのダイゴの息子?」毒を含むいくつもの顔が私を見た。
まるで競(せり)に賭けられている肉牛のようだった。
その頃は“ダイゴ”が何のことかわからなかった。
ただその“ダイゴ”という単語が出てくると、私はいつも嫌な思いをしなければならなかった。
いじめられていたのだ。

その頃の家族は父母娘が二人。家族全員が他人のような家であった。
食卓というものが存在しなかったと思う。言葉を交わしている場面を見たことがあっただろうか。
母の顔も娘達の顔も覚えてはいない。
父の顔に関しては、そこだけ黒いマッキーで塗りつぶしたかのようにまったく思い出せない。
ただ、されたことだけは塗り潰すことができず、今でも夢に見ては嗚咽を漏らす。

私は父に性的な行為を強要されていた。
部屋に呼ばれるたびに、人生が暗転したような感覚に陥った。
恐ろしくて痛いだけの行為は、ベットを汚さないようにと、いつも壁に手を押し当て立ったまま行われた。
潔癖症であった父は、必ずコンドームを私に付けさせた。
今から私の肛門を裂き血を流させる目の前の男根に
どんな気持ちでコンドームを被せていたか、父は知らないだろう。


地獄の中学時代は更に最悪な形で幕を閉じた。
卒業式が迫ったとある日、私はクラスメイトほぼ全員の前でリンチを受けた。
服を脱ぐよう指示され断った私は、そのまま立ち上がる気力がなくなる程に殴られた。
右目が使い物にならなくなっていたことに気付かないほど、視界を歪ませ泣いた。
輪のように私を取り囲み遠巻きに見ていた者たちの笑い声が、物凄く遠くに感じた。
「いいきみだ。」という誰かの言葉が聞こえて、何がだと思った。
きっと”ダイゴ”が関わるのだろうと思いながら、胃の内容物をぶちまけた。


その夜、父に呼ばれた私は痣だらけの身体を差し出した。
今考えれば阿呆な話だが、正直私は彼が心配してくれるのではと期待をしていた。
どうしたんだ?という言葉が聞きたかったのだ。
それはまるで普通の親子に為される様な会話だと思ったから。
しかし実際の所、彼が笑いながら放った言葉はあまりに酷いものだった。
「学校でもヤラれてるのか?」


翌朝、通勤ラッシュの車の群れに飛び込んだ。
昨晩、潰れた右目に父のペニスを差し込まれている間、考え出した答えを実行したのだ。
いわゆる自殺。いや、正確に言うと自殺未遂で終ってしまった。


目が覚めたら病院にいた。
目の違和感を覚え、鏡の前に立った私は驚愕した。
目ではなく頭に。黒髪であったはずの髪がすべて灰白になっていた。
「強いショックによるものだね」と医者が言った、それに付け足して
「生きたくても生きれない人もいるのに、自殺なんて。君は何を甘えているんだ。」と言われた。
何も知らない医者の無責任なその発言が、悔しくて悔しくて私はただただ泪を流した。
涙の訳を勘違いしてるであろう医者は「気持ちを改め生きなさい。」と
諭すような口調で満足そうに微笑んでいた。

病室に来たのは黒いスーツの男達だけ。それもお見舞いではなかった。






今度の家は父のみ。世界的に有名な医者で名を寿海といった。
「これから宜しく頼むよ」と伸ばされた手を、叩き落とした。
拒絶を先に申し渡した方が傷つかずに済むと学んだからだ。
好かれようと懸命になったり耐えたとしても愛されないことを学習した結果だった。

通う高校は受験した記憶のない私立だった。
いわゆるセレブしか通うことを許されない学校であった。
そこでも人と関わることが恐ろしく誰とも目を合わさず口を聞かなかった。
珍しい灰色の髪は、人を遠ざけるのに非常に有効であった。
周囲で楽しそうに笑う声が聞こえるたび、爪を毟(むし)った。

家では食卓の時間が私にとって拷問であった。
否が応でも父と顔を合わさなくてはならなかったからだ。
彼は学校生活やここでの暮らしについて、次から次へと私に質問した。
私はというと終始俯き、一言返せばいい方で、目の前の食事を片付け、
この場から早く去ることばかりを考えていた。

学校生活が数週過ぎた頃、奇跡的にもクラスメイトと話すようになった。
その中でも特に中の良い者ができた。お米と田の介という名だった。
今まで暮らしてきた中で、自分と同じように英語ではなく漢字というもので
構成された名前は彼らが初めてであった。

その時期、家での食卓の様子も変わりつつあった。
父は質問の他に自分の話をするようになった。今日あった出来事や昔の自分の話。
そうする中で“もしかして”という気持ちが次第に湧いてきた。
もしかして、この人なら愛してくれるかもという今まで何度となく抱いては壊されてきた気持ちである。
裏切られることをわかっていながらも二言三言と返事が増えた。


そんなある日だった。担任に突然呼び出された。
「話には聞いているだろうが、最近クラスで金が盗まれる事件が多くてな。被害額は20万にもなった。」
どうやら見た目といい非積極的な態度といい、彼にとって私が犯人である可能性は十分だったようだ。
僕じゃないですと答えると、頬を思い切り叩かれた。
驚き見上げた先にあったのは、過去幾度となく見てきた私を疎外する目だった。
その目に私は負けた。
やってもいないことを「そうです。」と言うのは、やったことを述べるよりも10倍苦しいものだと知った。
家事手伝いという名目で父から貰った始めての小遣いは、死ぬほど渡したくはなかったが、
その2万を不明金の返却に当てるしかなかった。残りの18万は「使った」と嘘を言うしかなかった。

噂が回るのは早い。この一件で築かれつつあったクラスメイトとの関係は0もしくはマイナスになった。
途端、フラッシュバックした中学時代に私は怯えた。彼らの笑い声が聞こえた気がした。
「本当のことを教えて」「そんなことお前がするわけないだろ?」
心配そうな顔をするお米と田の介の問いからも自ら逃げた。
家でも口を開かなくなった。
人が信じれなくなった。
自分の部屋で、幾度となく全身を切った。
最長にまで出したカッターナイフで刺すように切った。
自分の身体一部分一部分が憎くて憎くて仕方がなかった。
『生きたくても生きれない人もいるのに』あの医者の言葉が頭を巡った。
生きるということがこういうことならば、私は生まれなければよかった。


ある朝、父が「昨日先生から電話があった。今日学校に行くからな。」と言った。
“来たか”と思った。覚悟はしていた。
私は顔を合わさず、背中を向けた形でもうすでに決めていた一言を言った。
「僕がやりました。ごめんなさい。」
言い終わるなりすぐに家を出た。

学校で呼び出され指導室に行くと、すでに父と担任が座っていた。
私が席につくのを確認し、担任が口を開こうとした瞬間だった
「うちの息子はやっていません」
隣に座る父がはっきりとそう言った。私は父が何をいったのかさっぱりわからなかった。
それは向かいに座る担任も同じだったようで、彼は聞き返していた。
「うちの息子はそういうことをする子ではありません」父は担任をしっかりと見据えて答えた。
「ですが、本人がそう言ってるんです。盗った金だって出しました。」
「それはきっと私がこの子にあげたお金です。」
「お父さん、いい加減にして下さい!百鬼丸、お前がやったんだろう?!」

私は困惑していた。
このような事態になることを一mmも予想していなかったからだ。
しかし咄嗟に口から出た言葉は「ごめんなさい」というものだった。
幼い頃から繰り返してきたある種条件反射となっている言葉が出たのだ。
無論、この状況では犯行を認めるのと同じだった。
「ほらね。さすが、ダイゴ家の子だけあって、金にがめついんですね。」
その時は“ダイゴ”という単語には気が向かなかった。
それよりも担任の後に続くであろう、父の落胆の声が恐ろしくて、
手を握り締め、歯痕が付く位に下唇を噛み締めた。
「百鬼丸、本当か?もし、それが本当なら今度は顔を上げてしっかり謝りなさい。
違うのなら、はっきりと違うといいなさい。何も考えなくていいから、
本当のことを言いなさい。父さんがついてるから。」
顔を上げると父と目があった。
涙が溢れ、自然と唇が動いた。
「・・・・やってない」


一方で突然証言を変えた私に、担任は怒鳴り声を上げ私の髪を掴んで揺さぶった。
「こんな髪の色にしてるような不良ですよ!!風紀を乱している!!!
クラスとも上手くやれていない!!何しろ、あのダイゴの血が流れてる!!!」
「ぃたいっっ!ゃめてぇ!!」
「何てことをするだ!!!離せ!!!」
あわや大人の乱闘となるその時だった、指導室の扉が突然開いたのだ。
そこにはお米と田の介、その後ろにはずらりとクラスメートがいた。
「先生、アタイ達犯人見つけたんだよ!!」
「こいつだ!」
田の介が引き出したのは、最近ニュースを騒がしていた窃盗犯だった。


その後、犯行を認めなければはじめからこんなことにならなかったにと吐き捨てた担任に、
父は裁判を起こしてもいいと言った。
「この子の頬を叩いただろう?わしが気付かないとでも思ったか。毎日見てる息子の顔だ。」
「指導の一つでしてね。そんなことでいちいち裁判起こされてちゃかないませんね。
そちらもお金の無駄でしょう。裁判は2万円じゃできませんから。
その子のお金返しますんで、ちょっと待ってて下さい。」

担任が立ち上がろうとした時だった
父はカバンから分厚いサイフを取り出すと、それを机に思い切り叩き付けた。
勢いで何十枚という札束がバサバサと音を立て舞い上がり、
金銀に光るキャッシュカードの束がそこらじゅうに散らばった。
「金なんぞいらん。この子が幸せになるのならな。」
呆然とする担任を尻目に、父は私の手を掴みそのまま部屋を後にした。







完 08,01.13  ― 半生 ―

[その後経歴]
<高校>
・その後、三年間は友達や寿海に愛され楽しく過ごす。わーい。
・“ダイゴ”という理由で喧嘩を売ってくる奴らがいたが、そのうち簡単に倒せれるほどに成長。
・高校卒業間近、医大への合格が決まった百鬼丸のところに黒いスーツ男が来る。こんばんみ。
決められた大学と次の家を言い渡されるが、それを断る寿海と百鬼丸。
断れば寿海の病院、もしくは医者生命を潰すという黒スーツ。
「自分はどうなってもいい。この子には自分の意志で歩ませたい」という寿海。
しかし、愛する父に迷惑をかけたくないと、百鬼丸は黒スーツに従うことを心に決めるのだった!!
その夜、父に気付かれぬよう荷物をまとめ家を出る百鬼丸。
気付いた寿海が家を出ると同時に、黒いベンツが走り去った。『ちょっ待てよ!』キム○ク風
名を呼ぶ寿海の声に、百鬼丸はけして振り返らなかった。
最愛の父や友人と引き離され、自分の人生を決めている誰かを恨む。

<大学>
・マンションで一人暮らしとなる。(※24時間監視体制。監視する方もやってられないね)
・有名大学に入学。将来の経営を担う青年達にとって、そこでは全員がライバル同士だった。
・中でも“ダイゴ”ということで百鬼丸は執拗なほどライバル視された。
・ここで初めて“ダイゴ”が世界三大企業の一つ“醍醐キャッスルコーポレーション”の
ことであり、自分が社長の醍醐影光の長男だと知る。
(三大企業ってなんだ!?)
・高校時代の暖かい友人達の中でぬくぬく育ってきた百鬼丸は、次々と騙され蹴落とされる。
・そんな中で、歪んでいく精神。そう、それはまるで盗んだバイクで走り出す寸前。
校舎の窓ガラスを割る寸前。ベット軋ませる寸前。今頃思春期かよ。こんなん言ったけど尾崎スキだぜ。
・周囲を見返すようにひたむきに勉学に励み、トップの成績で卒業。

<就職>
・多数の企業から求人があるも、アットホームそうなどこにでもある中流会社に決める。
・のほほんとした空気の中で楽しい社会人生活。わーい。
・しかし、そこへ現れたのは黒スーツ男であった。こんちは。
醍醐キャッスルコーポレーションで働くため日本へ行く様いわれるが、断る百鬼丸・・・・・
→その後は、経歴通り。はい、めんどくさがって省略です。

<現在>
・そのずば抜けた経営才能で、低迷気味だった醍醐キャッスルコーポレーションを見事に
返り咲かせ、三大企業の中でも群を抜いたトップへと仕立て上げる。
・しかし・・・それは百鬼丸が考える醍醐や世界への復讐劇のシナリオだったのだ・・・・
さぁ、世界はどうなる!!??世界破滅を止められるのは、清掃員のどろろしかいない!!
がんばれ、どろろ!!行くんだ、どろろ!!清掃モップで空を飛べ。飛行船に乗ったトンBOを助けるんだ!!



※はい、不真面目な最後でした。もう、おもしろければいい。どんな不幸やねんってところが笑いのポイントです。
まぁ、私が言いたいことは、セレブが通う学校ならセキュリティを付けとけということです。オチに無理がある。
ちなみに、田の介は超有名ビジュアル系バンドの息子です。う〜んセレブ?
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