⇒ 主演、百鬼丸さんのメッセージ付き顔写真

07'04.15

昼ドラ 『 拝啓パパ上様シリーズ 』

第13話 「 想いの行方 」



「 おい、俺はあんたが嫌いだ。」

百鬼丸が最初に放った一言だった。



鍵の掛かった事務室の中、百鬼丸と多宝丸がいた。いや、正確には2人しかいなかった。

向かい合わせの二人の距離は、近いようで遠かった。

先刻、百鬼丸が事務室の扉を乱暴に開け入ってきたことも、その只ならぬ雰囲気にも、多宝丸は動じた様子はなく、
何事も無かったかの表情で、デスクから立ち上がり、空きっぱなしの扉を閉め鍵を掛けた。
そして、自分を鋭く睨み付ける人物の方を向いた。


「 おい、俺はあんたが嫌いだ。あんたの差別的な態度が嫌いだ。店長面してる所が嫌いだ。
人を馬鹿にしているような態度が嫌いだ!客なら誰にでも頭下げるようなところが嫌いだ!!
てめぇの面見てると、腹がたつほど嫌いだ!!!とにかく、ぜんぶが嫌いだ!!!!」

百鬼丸は捲くし立てるように話すと、ぜーぜーと荒く呼吸をしたあと、息を深く吸い、多宝丸を睨み付けた。

多宝丸は無表情で、こう一言だけ返した。

「 ああ。」

その態度に、百鬼丸の怒りは更に熱を増した。

「 そんで、昨日のありゃなんだ!!!俺が嫌いなら、俺に今までみたく直接嫌がらせすればいいだろ!!!
田之介まで巻き込むな!!!俺の友達まで傷つけんなよ!!
お前に何の権利があるってんだ!!お前に従業員を振り回す権利なんてねぇんだよ!!」

「 ・・・・聞いてたのか。」

「 ああ、聞こえたんだよ。あいつ、泣いてた。お前が泣かしたんだ!!あやまれよ!!」

「 なんで。 」

「 田之介を傷つけたからに決まってんだろ!!馬鹿か、お前は。」

「 ・・・馬鹿はお前だろ。
じゃあ言うが、俺に好きな奴がいても、それを隠して田之介と付き合うのが、
田之介の幸せだっていうのかよ。田之介を好きじゃなくても。」

「 そういうことじゃないだろ!!お前は、俺と田之介の仲を悪くしようと思って、
好きな奴に俺の名前を出したんだろうけど、田之介は本気で告白してたんだ!!
本気でお前みたいな奴のこと好きだったんだ!!それを・・・それを、あんな答えで返しやがって。
てめぇの目録どおり、俺と田之介は絶交状態だ。俺を苦しめれて良かったな!!
でもなっ、今回のことは俺だけじゃなく、田之介も傷つけた!!今までの事は
俺だけが我慢すればいいことだったから、耐えてきたが、今回みたく俺の友達まで巻き込むのは我慢できねぇ!!!」

顔を真っ赤にし、息を荒くしている百鬼丸とは逆に、多宝丸は顔色一つ変えずその訴えを静かに聞いていた。
そして、ゆっくりと口を開いた。

「 悪かった。そんなつもりじゃなかったんだ。」

「 だったら、そう田之介に謝れよ。」

「 それは無理だ。」

「 何言ってんだよ!俺が求めてるのは、俺への謝罪じゃない。田之介への謝罪だ!!
なんだよ、プライドでもあんのかよ。お前のプライドなんて田之介の涙に比べりゃ一円の価値もねぇんだよ。」

「 違う、そうじゃない。田之介に返す他の言葉はない。本当に、お前が好きだから。」

「 は?」

「 好きだ。」

百鬼丸がその言葉の意図を理解しようとする前に、多宝丸の手が百鬼丸の両肩を掴んだ。

「 俺は、お前がす 」

ドカッ!!!

「 ふざけんなよ!!!!」

百鬼丸の怒声と共に、鈍い音が鳴った。

多宝丸の右頬に、百鬼丸のこぶしが入った音だった。

多宝丸は拳の方向に曲がった顔を、ゆっくりと正面に戻した。

静かに、多宝丸の鼻から血が流れてきた。

「 ふざけんなよ。」

百鬼丸が一層低い声で、そう呟いた。

「 ふざけんなよ。どいつもこいつも・・・・」

百鬼丸の目頭が熱くなった。何かが出そうになるのを必死で堪えた。

「 っ・・・どれだけ人を馬鹿にすりゃ気が済むんだ!!!」

そう言い残し、部屋から出た。悔しかった。ただ、それだけだった。



午後の業務中、百鬼丸は心ここにあらずな手つきであった。
その様子を見ていた、万代は、深く溜息をついた。
「仕方ないわね、人肌脱いでやりましょうか。」




帰り道、コンクリートが夕日に照らされ、オレンジ色が鮮やかに映えた。

トートバックが何度も肩からずり下がった。その度に、肩に掛け直した。
そんな事を繰り返しながら、百鬼丸は考えていた。

自分は甘い考えがあったのかもしれない。
多宝丸はあれでも自分以外の従業員には優しい。もしかして、田之介が傷ついたことを伝えれば、
あの悪ふざけの一言が悪かったと思い、田之介に謝ってくれるのではないか。
そうしたら、田之介の誤解も溶け、自分との仲も元通りになるのではないか。と、そう思っていた。
だが実際の多宝丸は、田之介に対して謝る気もない上に、「好きだ。」というふざけた一言で自分を馬鹿にした。

田之介の事を考えると、苦しさで食道が焼けつきそうだった。
もう、これで仲直りのチャンスは消えた。俺と田之介は、もう・・・・。
大人になるにつれ、親しい人が減っていくのが悲しかった。

「 なーん。なーん。」
猫の鳴き声に、顔を上げた。
無邪気に駆ける子猫の後を追うように、親猫が着いて行く。
自分の前を横切り、民家の庭へと入っていった。
茂みで猫は見えなかったが、以前として、可愛らしい子猫の声が聞こえた。


ふと、我が子を思い出した。
”帰ったら、どろろが待っていてくれる”
ただ、そのことだけが、生きているという事を感じさせる唯一の糸だった。
どんなに辛くても、どんなに悲しくとも、どんなに死にたくても、あの子がいる。
何よりも大切で、何よりも愛している、あの子がいる。


マンションの前に着く頃には、道路は影の色と同化していた。




閉店後の暗くなったスーパー。事務室にはまだ、一人の男がいた。

多宝丸は、今日の売上をパソコンに入力していた。

近くのティッシュボックスからティッシュを取り出し、鼻をかんだ。

「 っつ。」

鼻の傷ついた粘膜が震え、鼻腔に鋭い痛みが走った。

昼間の光景が脳裏を巡った。

どうしようもない自分自身と、どうしようもならないこれからと、
伝わらなかった自分の気持ちが、胸の辺りでぐるぐるとうずめき、苦しさで、
多宝丸は頭を抱え、机に伏した。

唇が震え、言葉が机上に零れ落ちた。

「 好きなんだよ・・・・。」

消え入るようなその声は、まるで小さな子供のようだった。

その返事をしてくれるものは、もういない。

消えかけの蛍光灯のじーーという音だけが響いた。





次回予告

「 ただいま、と扉を開けると、そこには男物の革靴が!!!
まさか三郎太っと背筋を凍らせる百鬼丸!!我が子の身の危険に土足のまま部屋へ駆け上がった!!
その頃、田之介はICUで治療を受けていた。
“百鬼先生、心停止ですっっ!!!” “すぐに、カルチャーショックして!!”
まさかの医療事故発生か!!??翌日のニュースに目が離せない!!!
 そんな中、名探偵不知火の助手である、みおは、不知火の狂気染みた行動を警察に密告!!
“もしもし、片乳出してる不審者がいるんですけど。(原作コスチューム)”
電話に出たのは、なんと三郎太だった!!!“わかりました、至急向かいます。”
三郎太が車を走らせ、向かう先は!!?“マリンちゃん、今行くぜ!!”まさか、パチンコ海物語か!?
 そして、疲れきった多宝丸が帰ってきた家の表札には、「醍醐」の文字!!
優しい母親に迎えられ、思わず涙が出てくるのであった。 」

次回
「 “母さんっフラれたよっっ!!”マザコン多宝丸全開 」
を乞うご期待。


ここで、番組から嬉しいお知らせがあります。
一人の男を中心に、複雑に絡まり合う糸と糸!!!
その蜘蛛の糸に絡まった、奥様方が続出中!!
視聴率43%を越えた史上初の昼ドラ“拝啓パパ上様シリーズ”のDVD BOXが登場!!

ここで、主演の百鬼丸さんから、メッセージが届いております。

「 皆さん、こんにちは。いつも見て下さってありがとうございます。
DVDの発売で、朝でも夜でも、お好きな時間に見て頂ける様になりました。
 これからも、より良い作品となるよう、精一杯演じさせて頂きます。
 今度とも、よろしくお願いします。 」

ここで番組からプレゼントのお知らせです。
百鬼丸さんのメッセージ付き顔写真を50名様にプレゼント!!
官製はがきに、ファミリーネーム、ファーストネーム、あだ名、イニシャルを書いて送って下さい。
当選の発表は、商品を持って代えさせていただきます。



from : johnny
※一番上の絵が、メッセージ付き顔写真です。
これは、このサイトに来て下さる皆さんへ、私からの「ありがとう」の気持ちも込めています。
いつも応援してくださって、本当にありがとうございます。すごく嬉しいです。












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